看護師のための消化の仕組み

消化とは

消化とは、「食べ物を吸収できる形、つまり栄養素に変化させること。」です。

 

消化器の最終目標は消化ではありません。
消化ではなく、吸収です。

 

ですから、どんなに食べ物の消化を徹底しても、
それを吸収することなく排出してしまったのでは意味がありません。

 

逆に、食べ物が何の前処理も経ず、そのままの形で吸収できるのだとしたら、
消化という過程は必須ではありません。

 

現実には、吸収のためには入念な消化が必要です。
そして、この前提があってはじめて、
消化とは、「食べ物を吸収できる形、つまり栄養素に変化させること。」という定義が意味をなします。

 

消化器は多彩なメカニズムによって食べ物を段階的に消化しています。

 

そして、その働きは、単なる前処理として片付けるには、
あまりにも大きな位置づけを占めています。

 

生体は、栄養素を取り入れることによって
エネルギーを獲得しています。

 

そのための、消化・吸収だけを見ると、
エネルギーを消費しているという事も認識しておく必要があります。

物理的消化

吸収は、消化を経なくては進みません。

 

その理由の一つとしては、
食べ物が管腔内に存在しても、
粘膜に接触している部分しか吸収できないというところにあります。

 

そのため、消化器の第一の使命は、
食べ物を形態の上で細かく破砕することになります。

 

例え、粘膜から近いところであっても、
吸収不可能な物質が介在していると、
やはり吸収が阻まれれるという問題があります。

 

ですから、破砕されたものをかき混ぜ、混和することも
吸収にとっては、大きな意味を持ちます。

 

このように、食べ物の形態は変えるけれど、
化学構造までは変化させない消化の過程を「物理的消化」、
或いは「機械的消化」といいます。

 

消化管は、破砕・混和を行うだけではありません。

 

口側から肛門側に向かって食べ物を一定方向に輸送する働きも担っています。

 

理論上は、消化を全くともなわない輸送を想像する事もでいますが、
実際は、消化管運動によって破砕・混和も食べ物を一定方向に輸送する働きも
同時並行的に行われるので、ここでは輸送も物理的消化の一部と考えます。

 

このようかことから、食べ物を歯で破砕「咀嚼」し、
口腔から咽頭・食道を経て胃まで輸送する「嚥下」の段階で、
既に物理的消化は始まっていると考えます。

化学的消化

例えば、ミキサー食の場合は、
この物理的消化を代行したものと考えることができます。

 

ですが、残念ながらミキサーにかけただけでは、
直ちに吸収できる状態にはなりません。

 

腸管粘膜は、比較的単純で、限られた種類の物質しか吸収できませんから、
さらに化学構造を変化させて吸収可能なものにする必要があります。

 

これが「化学的消化」です。

 

化学的消化は、消化液に含まれる消化酵素によって行われます。

 

消化管自身も、もちろん胃液や小腸液など消化液を分泌します。

 

しかし、化学的消化の時には、唾液腺や膵臓など、
消化管のメインルートから外れた副器官の働きも重要です。

 

そこで、消化「管」と副器官をあわせて消化「器」と呼ぶのです。

 

消化は、このように、概念上は、大きく分けると
物理的消化と化学的消化に分けられます。

 

実際には、消化管は消化液を分泌しながら運動していて、
物理的消化と化学的消化を同時に行いながら徐々に消化を進めています。

 

また、腸内細菌による分解を「生物学的消化」と呼び、
消化に含めることがあります。

自律神経系が消化を支える

消化器の置かれた状況は、食事中〜食事後と、空腹時とでは全く異なります。

 

管腔を通過する食べ物の状態は、刻一刻と変化するので、
消化管にいは、この変化に迅速に対応することが求められます。

 

その迅速な対応には、神経系の反射が大きな役割を担います。

 

摂食、嚥下、排便など、一連の消化過程の初期と末期には、
意思によって随意的にコントロールできる部分がありますが、
その殆どは不随意な作用で、意思によってコントロールすることはできません。

 

意識によってコントロールできる随意的な作用にさえ、
反射による機構に大きく依存しています。

 

内臓の神経性反射には、自律神経の存在が欠かすことができず、
消化管も例外ではありません。

 

一般に、自律神経の遠心路によって作動する代表的な組織といえば、
平滑筋と分泌腺です。

 

消化管は、平滑筋を備えています。
そして、その運動によって物理的消化を営み、
同時に消化液の分泌腺を備えて化学的消化に寄与しています。

 

そのほかにも、粘液分泌による消化の補助、粘膜の保護、
消化管血流を調節する血管壁の平滑筋の働きなどもあります。

 

このようなことから、消化管は、自律神経に支配された
組織の塊のような臓器であるといえます。

 

消化管の活動は、原則として副交感神経の刺激によって亢進し、
交感神経の刺激によって抑制されます。

 

副交感神経の経路として最も重要なものは迷走神経で、
脳神経核から伸びた迷走神経は、解剖学的に見ると
食道、胃のみならず、ずっと尾側にある小腸や大腸、
さらには肝、胆、膵などの副器官にまで枝を伸ばし、
文字通り迷走するかのように広範に分布しています。

 

消化管の末端部のみは、仙髄から伸びる骨盤神経が副交感神経としての経路を担っています。

 

交感神経は、これらの間のレベルである胸や胸髄から、
やはり広く消化器に分布しています。

 

消化管の神経支配を見てみるt、自律神経のイメージのみが先行してしまいますが、
消化管はさらに特徴的な神経系を備えています。